仲間と職員

仲間と職員

わだちで働く仲間と職員の役割

  Bさんは身障手帳1級。障害程度区分は6。脳性まひによる全身性障害で、手動車いすを使用。トイレや食事等生活のあらゆる場面で介助が必要で、言語障害もあります。わだち作業所創設当時からの仲間で、わだちの中で最も重度の障害者です。独学でプログラムを学び、情報処理資格1種を取得した努力家です。SEとしてシステム開発の仕事をしています。週2日わだちに通所し、その他は在宅勤務です。

  彼が手がけたシステムは、ゴルフ場業務システム、各種団体の会員や会費の管理、タクシーの運行管理等さまざまです。打ち合わせの段階から参加し、チームでの開発ではリーダの役割を果たしています。未知の業界の、それもバックヤード業務について理解し、使う人の立場に立って必要な仕様を組み立て提案するので、彼の開発したシステムはお客さんに喜ばれています。「専任のスタッフが台帳とにらめっこして1ヶ月かかっていたのが、誰でも瞬時に出せるようになった」「有休が取れるようになった」「新聞を読む余裕ができた」など、顧客からの評価が仕事の励みにもなっています。

  言語障害と書字障害のため打ち合わせには健常者が同行しますが、メールでのやりとりやリモートメンテナンスの環境ができてからは(かつ顧客側の情報リテラシーがある場合)、仕事上の障害はほとんどなくなってしまいました。代わりに、顧客の営業日の関係で日祝日や盆正月にも対応に追われることもあります。

  わだちが集計業務に取り組むようになったのは、Bさんが「アンケートの集計プログラムならできるかも知れない」と言ったことがきっかけでした。20年前の集計仕事では、集計の設定をプログラムに書くしかなかったため、Bさんがつきっきりで集計結果を出すしかなく、何日も徹夜作業が続きました。その後仲間の声を取り入れ、簡単に設定できるように改良し、多くの仲間が担当できるようになり、しかも同時に何本もの調査の入力とチェックと集計が進められるようになりました。こうした業務の省力化、平準化、品質管理の発想は、顧客向けのシステム提案にも生かされています。

  Mさんは全盲の1級の視覚障害者。民間企業で働いていましたが、中途失明により退職。コンピュータを使った仕事をめざし、36歳でわだちに入所。暗中模索からたどり着いたのが今も続けているテープ起こしの仕事でした。

  わだちには、この他、聴覚障害、知的障害、高次脳機能障害等さまざまな仲間が働いています。それぞれの残存機能に合わせて仕事を切り分けたり、組み立てたり、品質管理の仕組みを作ったり、さらに新たな職域を開拓したりするのが職員の仕事です。職員の仕事も固定的ではなく、仲間同士でまわっていく業務スタイルをめざすことになります。